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東京高等裁判所 昭和38年(ラ)457号 決定 1963年10月24日

抗告人 浜田マツ 外一名

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人等の負担とする。

理由

抗告代理人は、「原決定を取り消す。新潟地方裁判所執行吏石栗雅男が昭和三十八年六月七日新潟簡易裁判所が昭和三十三年(ハ)第四〇三号事件の承継執行文附与の判決正本の債務名義にもとづき抗告人等居住の原決定添付目録記載の物件に対しなした家屋明渡の強制執行は許さない」との裁判を求め、その理由として、別紙抗告理由書記載のとおり主張した。

民事訴訟法第五百二十八条第二項によれば、判決に表示された債務者の承継人に対して強制執行をなす場合には執行すべき判決のほか、なおこれに附記する執行文を送達することが執行開始の要件とされているから、右送達前に開始された強制執行は違法であり、承継人はこれに対し執行方法に関する異議を申立ることができるが、右執行が取消されるまでの間に、上記の送達がなされたときは、その執行についての瑕疵は治癒せられるものと解するを相当とする。

本件記録ならびに原告白井岩次郎、被告朴夢竜間の新潟簡易裁判所昭和三十三年(ハ)第四〇三号建物収去、土地明渡事件の記録によれば、債権者白井岩次郎は上記建物収去、土地明渡事件の判決に基く強制執行のため債務者朴夢竜の承継人である抗告人両名に対する承継執行文の附与を受け、右承継執行文は昭和三十八年六月七日、執行すべき判決は同年六月二十七日にそれぞれ抗告人等に対し適法に送達せられていることが認められる。そうだとすれば、抗告人等主張のように上記執行すべき判決の送達前である同年六月七日および同年六月二十二日に債権者の委任を受けた執行吏が抗告人方に臨場して任意退去を催告したことは違法であるといわなければならない。しかしながら、上記のように、おそくとも同年六月二十七日には判決の送達がなされ執行の要件を具備するに至つたのであるから、その瑕疵は治癒せられたことになり、債権者は右判決に基く強制執行を続行することを妨げられないものというべきである。

上記と理由は異るが、抗告人等の異議申立を却下した原決定は、結局において正当に帰するから、本件抗告はその理由がない。

よつて、本件抗告を棄却することとし、抗告費用は抗告人等の負担として主文のとおり決定する。

(裁判官 村松俊夫 杉山孝 山本一郎)

別紙 抗告理由書

一、抗告人の異議申立の趣旨及び理由は原審への申立書記載のとおりであるが

原審は「六月七日には執行吏としては債務者(本件抗告人等)に強制執行に着手する前に任意の履行を促したという段階にとどまり、それ以上に明渡しの強制執行を現実に開始していなかつたというほかはない」と却下決定理由に説示されたが

強制執行を現実に開始せば所謂明渡執行の完了であつて本件の如く方法に関する異議申立する余地がないと信ずる執行吏が任意の履行を促すこと、それ自体は已に執行の開始(ヒラキ、ハジメ)であつてこのときに執行吏は法令に適応する条件を具備しなければならない。

換言せば民訴法の執行開始の条件を具備しなければならない、これが具備しないときは執行は無効である。

原決定は執行開始の法令の解釈を誤つていると信ずる。

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